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“親”がつないでくれたもの

2020年2月21日
コラム
若狭 和明

ノンフィクション「お前の親になったる」

 

小学館集英社プロダクションより、ノンフィクションルポタージュ「お前の親になったる」(草刈健太郎著)が、2019年10月10日に発売されて数ヶ月が経ちました。

2019/10/10「お前の親になったる」(小学館集英社プロダクション)

 

15年前にアメリカで妹を殺された草刈健太郎氏(著者)は、想像もつかないほどの深い傷を心に負っておきながら、元受刑者を雇う『職親プロジェクト』に関わります。犯罪者への憎しみに支配される中で、元受刑者に関わり、自身の傷を癒すことなく、日々葛藤を続けます。

 

本書の制作過程では、毎日、制作者としてこの物語に向き合いました。それだけに発売から数ヶ月経った今でも、この本から気持ちが離れることはありません。多数の本を制作してきた中でこれほどまでに「多くの人に知ってもらいたい」という気持ちになったことはありませんでした。

 

本書が発売されてから、著者から本書が届きました。制作者なので完成品は手元にあります。ただ、著者から送られてきたものは、その完成品とは違うものでした。

表紙をめくったページに書かれた著者・草刈健太郎氏のサイン。

 

三文字に込められたメッセージ

 

著者から送られてきた本には、「つなぐ」と書かれたメッセージがありました。本書はまさしく、「人と人のつながり」について深く感じされる内容になっています。また、本書を制作するにあたり、私は著者、また本書制作に関わった人たちとつながりができました。これは単なるビジネス的なネットワークではなく、人としてのつながりです。

 

本書のタイトルには“親”という文字が入っています。カバーには箔押しという印刷技術で、この文字を強調しました。著者が元受刑者の親になる、という意味合いもありますが、ここには著者の親、また読者の方の親、さらには読者の方自体が誰かの親であることも表しています。金色にしたのも、特別な存在であることを表現したかったからです。

 

 

読んで完成する本

 

制作者として本がたくさん売れることは、大変光栄なことです。ただ、この本に限っては先にも述べましたが、「多くの人に知ってもらいたい」というのが素直な気持ちです。本書を読まれたら、誰かに本書のことを伝えていただきたい。本書を読まなくても、例えばこのブログを見ていただいたら誰かに伝えていただきたい。

 

本書では著者の考えを記述していますが、どれも断定的な表現はしていません。それは葛藤しているからです。本書を読んだ方それぞれが何かを感じ取っていただいたとき、初めて本書は完成すると思っています。

 

若狭 和明
スタジオポルト編集部部長。日本にある価値、を本で表現し発信するのが制作コンセプト。読者の心をくすぐりたい。