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マンガでわかるマンガの描き方入門書!「小学生から始めるマンガ教室」

2020年9月3日
編集後記
石井貴大

こんにちは、企画制作部の石井です。

普段からよくイラスト技法書を編集制作している私ですが、
その多くは中高生〜大人向けです。
そこで子どもの頃にこんな本があったらいいな、と思って企画をしたのがこちら。

 

小学生から始めるマンガ教室」(大泉書店)2020年6月発売

監修・原作/すぎやまゆうこ
マンガ・イラスト/かんくろう
協力/マンガスクール中野

今回はこの本の紹介兼編集後記です。

 

絵の描き方でもイラストの描き方でもなく、

マンガの描き方がわかる本

 

イラストとマンガ。
これらはあまり意識をしていない方からすると、大体同じもの、なんて思われがちかもしれません。
ですがこのふたつ、役割が全く異なる芸術なんです。

 

一枚の絵の中で、伝えたいことや世界観を表現するのがイラスト。
複数の絵を並べ(コマに分けて)、セリフを付けて物語を表現するのがマンガ。

 

ざっくりと分けるとこんな違いがあります。
役割が異なるということは、制作をするための手法も考え方も異なるということ。
マンガにはマンガの、イラストにはイラストの、手法と考え方があるのです。
共通するのは、デフォルメされた絵を描く、という点のみと言ってもよいでしょう。

 

しかし多くの子ども向けのマンガ教本では、
絵の描き方(顔や手の描き方とか、男女の違いとか)に重点が置かれていていることが多く、
マンガ特有の考え方に特化して詳しくひもといた本は多くありません。
(補足:大人向けにはたくさんありますよ)

 

子ども向けの場合は特に、イラストもマンガも両方描けるようになりたい
という方をターゲットとして、デフォルメされた絵の描き方を
幅広く扱っているパターンが多くなりがちです。
ただそうなると、「マンガを描きたい!」と強く思っている方に向けては
ちょっと物足りなくなってしまう印象です。

 

そこで、絵・イラスト・マンガの違いを明確に切り分けて、
マンガ特有の考え方や手法にフォーカスをし、
子ども向けに内容を噛み砕きながら、
読みやすいようにマンガを使って解説をしたのが、本書です。

 

本書の目次。最初から最後まで、マンガに特化。

 

企画から2年

 

企画の構想は2年前にはありました。
当初、子ども向けにわかりやすいマンガの描き方を伝えたいという気持ちから
個人的に企画書だけは作っていたのですが、
私自身はマンガやイラストの専門家ではないため、
子ども向けに実際マンガを教えている方の協力が必要だと思っていました。

 

そこで2018年の4月、子ども向けのマンガ教室を開いている、
マンガスクール中野さんを訪ね、
実際に行っている授業を見学させていただきました。

 

教室では小学生が自作のマンガを描いていて、
小学生でもこんなにマンガを描けるのかと衝撃を受けたのを覚えています。
その授業の先生が、後に原作・監修を引き受けてくださったすぎやま先生でした。

 

その後しばらく企画や構想を練る期間が続きましたが、
すぎやま先生の協力をいただいてからは
現場で培ってきたリアルなノウハウが構成に盛り込まれていきました。

 

それから実際に制作に入ったのは、2019年の春頃からです。
構成が概ねまとまり、イラスト・マンガの担当のかんくろう先生も制作に加わり、
更に内容がブラッシュアップされていきました。

 

すぎやま先生もかんくろう先生も、
共にマンガに対して真摯に取り組んでいる方だったので、
終始この本の制作に向き合ってくださり、
制作が進むに連れてその熱い想いがどんどん本に注がれていきました。

 

そうして企画から2年、制作に1年、じっくりと作り込み、この本はできあがりました。

 

マンガでわかるマンガの描き方

 

この本の大きな特徴は、全体の6割強(なんと100ページ以上!)がマンガ
になっていて、子どもたちがすらすらと読むことができる点です。

 

マンガで説明できる情報量には限界がありますし、
本全体のページ数も決まっていますから、
どうしても解説ページや読み物ページでの補足が必要になってきます。
(こういった本を作るときにとても悩む点ですよね)

 

しかしマンガではないページが多くなればなるほど、
読むためのハードルが上がってしまうのは避けられません。
ですからそうならないよう、本書では可能な限りマンガの中で説明できるように、
1ページごとに入れる情報の取捨選択を重ね、
何度もネームや解説ページを作り替えていきました。

 

子どもは情報が詰め込まれているだけでは読んでくれませんから、
読んでいて楽しいように、飽きないように、
ギャグ描写やシナリオの流れにも気を使って整えていきました。
(この点は特にかんくろう先生の尽力によるところが大きかったです)
その結果、マンガとマンガの間に自然と解説ページが入って来るような構成が完成し、
文章が苦手な子どもでもすらすらと読み切れる、と自信を持って言える出来になりました。

ぜひ読んで欲しい一冊です!

 

おわりに

 

ここまでていねいにマンガでマンガを説明している入門書は、割と珍しいと思います。
大人が読んでもタメになるくらいに、内容の充実度も高くなっていますので、
ぜひこのブログを読んでいる方も手に取って読んでみてくださいね。

 

ちなみのこの本、巻頭になんと25ページものフルカラーマンガがあって、
めちゃくちゃ豪華です。必見ですよ。

 

フルカラーマンガページ。このクオリティが25Pも!

 

扉に番外編の四コマがあったり、本体表紙に舞台の設定画があったり、
遊び心も満載ですので、そういう小ネタもぜひ見つけて楽しんでみてください。

 

何かひとつでも、読んでくれたあなたに発見がありますように!

 

石井貴大
スタジオダンク企画制作部所属。アニメ、ゲーム、マンガが好きで、同人誌即売会に参加することもしばしば。好きが高じて自分でイラストを描いたり、ゲーム制作会社にいたりした。現在は主にイラスト関連書籍や児童書籍などを担当。