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じっくり解説するオタク・腐女子用語 ~初級編~

2020年12月18日
コラム
Miyazawa Mari

●BL、腐女子、攻め/受け…こんな言葉を聞いたことありますか?
昨今では認知度が高まった「BL」や「腐女子」という言葉。
オタクや腐女子の市民権が認められつつある中で、こういった言葉がオタク・腐女子ではない人の耳に入る機会が増えているのか、ネット上での用語解説記事をしばしば見かけます。
しかし、それらの記事は単語の説明のみで、
「実際にどうやって使っているのか分からない」
「細かいニュアンスが分からない」
と困惑する一般人(非オタクの方)も多いのではないでしょうか。
そこで、用語の意味の解説にとどまらず、腐女子を含むオタク文化の一端を解説したいと思います。

 

●筆者…オタク・腐女子歴15年、BLイラスト本も制作しています
私のオタク・腐女子歴は15年。ゲームが中心でたまに漫画やアニメも見るというタイプです。
BL関連では、イラスト本を制作しました。


『BLカップルの作り方が分かる! 擬人化男子の描き方<学園編>』(玄光社)
本の詳細はあとでご紹介するとして、こんな私が、主観や体験もふまえつつオタク・腐女子用語を解説していきます!

 

●用語①BL(びーえる)
ボーイズラブの略で、広義には男性同士の恋愛を描いた作品群のことです。
現実の同性愛に対して使われることはほとんどありません。
イラスト、漫画、アニメ、小説、ゲーム、映画などの創作作品のジャンル名として使われます。
歴史に言及すると、女性向けの少年愛作品である「耽美」と呼ばれる作品群がBLの前身とされています。
おおまかに成り立ちをまとめると、元は少女漫画誌の中で美しい少年同士の性愛を描いた作品から始まり、女性に人気が出た漫画やアニメの二次創作を経て爆発的に広がったのち、エンターテイメント色の強い商業作品が興ったジャンルです。
同じようなジャンル名として、NL(ノーマルラブ。男女の恋愛作品のこと)、GL(ガールズラブ。女性同士の恋愛作品のこと)があります。

 

●用語②腐女子(ふじょし)
BLが好きな女性のことを指します。「女子」という言葉から、狭義には若い女性に対してのみ使われますが、最近ではそのような使い分けはほとんどされていません。
あえて「貴腐人(きふじん)」と言えば、妙齢でBL好きの女性に限定した言葉になりますが、腐女子ほどは浸透していません。

 

●用語③腐る(くさ・る)
BL作品を好きになるという意味で使われます。先に挙げた腐女子は「腐る」+「女子」を掛け合わせた単語です。
これは私見ですが、男性同士の恋愛という“普通ではない”ものを好きになる行為への腐女子自身の自嘲的な思いから、このような言い方が広まったのではないかと思います。
10年ほど前に私が地方の学生だったころは、まだBLも腐女子も社会的に市民権を得ていませんでした。
そういった中で、何となく言動から同じ腐女子のニオイがするという相手に対して、腐女子かそうでないかを見分けるときに「腐っていますか?」と聞いていました。
当時は同じ腐女子にしか伝わらない単語だったので、腐女子ではない人に自分が腐女子とは気づかれずに見極めができていたのです。
それくらい、腐女子と言う存在は周りから隠さねばならぬものであり、来るべくしてこちら側に来た人以外には知られてはいけないという感覚でした(今でもその感覚を引きずっていますが……)。

 

●用語④CP(しー・ぴー)

カップリングの略で、性別を問わず恋愛的な関係にあるキャラクターの組み合わせのことを指します。
現在はBLに限らず、オタク分野で広く使われている印象です。「カプ」とも言います。
これは特に使い方がわからない言葉だと思います。
一例として挙げるのが「〇〇〇(キャラ名)と×××(キャラ名)のCP絵を描きました!」というSNS投稿。
このとき、投稿者は「〇〇〇と×××のイラストを描きました。このイラストはただ2人の絵を描いたわけではなく、2人が恋愛的に付き合っているという前提で描いている絵です」という意図で発言しています。
場合によっては「恋愛的な要素のあるイラストなので、〇〇〇と×××が恋愛関係にあるものを見るのが嫌な人は見ないでください」という注意的な意味も含まれます。
オタク文化には、その中に入ってみないと分からない前提条件や思想のようなものがあり、そこに慣れてしまった人はその前提条件がないことを想像しづらい傾向にあるので、単純に単語の意味を置き換えて説明するだけのネット記事では補えないものがあるように思います。

 

●用語⑤攻め/受け(せ・め/う・け)

CPの中で、性行為を行う際に男役となるポジションを攻め、女役となるポジションを受けと言います。
また、そのポジションにあたるキャラクターそのものを指す場合もあります。
多くのCPは2人1組なので、どちらかが攻めでどちらかが受けになります。
「このキャラクターが攻めです」や「このBL漫画の受けがかわいい」というふうに使われます。
それなら、BL作品では絶対に性描写があるのかというと、そうではありません。
一次創作、二次創作に限らず性描写はなくても、作者の中では攻めと受けが決まっていることがほとんどです。
ただし、中には攻めと受けをあえて決めない/決められない作品も見受けられます。
この攻めと受けのシステムは、BLが二次創作によって爆発的に流行した際に生まれました。
むしろ、このシステムが発見されたことで、好きな作品の好きなキャラクターを攻めか受けかに当てはめるだけで二次創作ができ、作品制作のハードルが下がったことで女性向け同人誌文化が広まったのです。

 

●こんな腐女子が作ったBLイラスト本が、あります
ここまで解説したのは基本中の基本の単語なので、単語そのものの意味はすでにご存じという方も多かったのではないかと思いますが、いち腐女子の観点やオタク・腐女子の世界の雰囲気をなんとなくでも感じていただければと思います。
さて、冒頭でも少し触れました、この分析・解説大好きな腐女子が作ったイラスト本がありますので、ここで再度ご紹介します。


『BLカップルの作り方が分かる! 擬人化男子の描き方<学園編>』(玄光社)

この本では、擬人化をすることで初心者でもかんたんにキャラクター付けができるイラストの描き方と、BLに仕上げるカップリングの考え方を紹介しています。
なんとBL漫画もあります!
すでに発売されておりますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
ちなみに、用語解説の中で出てきたイラストは本書に掲載されているものです。

また、ほかにもBL書籍の企画も進行しているので、ご紹介できるタイミングになりましたらお知らせいたします。
BLの世界は広く深い沼です。うっかりこの沼に突き落とされないよう、ご注意ください。もし、突き落とされてしまいましたら、歓迎いたします。

Miyazawa Mari
スタジオダンク所属。ビジネス、クラフト、オタク分野に関心が強い。誰かの心に刺さる本を作りたい。