私ごとですが昨年の2020年、裁判員裁判に参加してまいりました。
めったにない機会でしたので、守秘義務等に違反しない範囲で記録を残したいと思います。
まず2019年11月に裁判所からA4サイズの封筒で通知書が届きました。
封筒の中には「来年の裁判員候補者名簿に名前がのりました」というお知らせと、裁判員に選ばれた際どんな事をするかがわかるガイドブック、参加可能かを調べるための調査票が同封されており、裁判員や裁判について知らない人でもわかりやすいよう親切丁寧に説明されていました。
正直、裁判員制度が始まって10年以上経ちましたが、まわりで裁判員になったという話を聞かなかったので「本当に通知くるんだ…!」と驚きましたが、裁判に参加してみたいという気持ちは強くあったので思わず喜んでしまいました。
ちなみに病気やケガ、家族の介護が必要、どうしても外せない仕事があるなど裁判への参加が難しい人や、自衛官や警察関係者など裁判員になれない職業の人は同封されている調査票で不参加を表明できます。
呼出状が届く
それからしばらくは何の音沙汰もなく過ごしておりましたが、夏に裁判所から呼出状なるものが届きました。
呼出状には、参加する裁判の事件概要・日程などが記載されており、およそ2ヶ月後に5日間裁判があるという内容でした。(ちなみに長いものだと100日ほどかかった例もあるそうです。)
この段階で裁判員になることが決定するわけではなく、「選任手続」という抽選会が行われるため、選任手続期日についての通知も同封されていました。
私はこの段階で会社に裁判員裁判に参加するかもしれない旨を伝えて、仕事の調整をはじめました。
選任手続は「長くて13時頃までかかります」と書いてあったので、午前休をとって参加しました。
部屋に通される際に抽選番号と詳細な事件概要、アンケートなどを渡されて席に座り、30人ほどが揃ってから説明が始まりました。老若男女さまざまな人が集まっていたのが印象に残っています。
抽選を始める前に辞退するかどうかを確認してくれるタイミングがあるのですが、コロナの状況を鑑みてか「“感染防止対策が不安なので辞退したい”という人がいれば申し出てください」というアナウンスがありました。
そして別室でパソコンを使った抽選が行われ、私は「補充裁判員」として裁判に参加することが決定しました。
裁判員裁判では、裁判官3人と裁判員6人によって刑を決めることになるのですが、裁判の途中で急な病気や怪我など裁判員が参加できない事態になった時のために途中で交代できるよう裁判員のほかに補充裁判員として2人を決めることになっています。つまり補欠要員です。
とはいえ、途中で交代することになった時に裁判内容を知らないのでは意味がないので、補充裁判員も他の裁判員と同じように裁判に全日参加することになります。
裁判員と大きく違うのは「被告人質問の際、直接質問ができない」「最後に量刑を決める際に参加できない」ところになります。逆に言えばそれ以外は裁判員と同じように参加することになりますし、評議の際に意見を言うことも必要になります。
裁判員が決定した後は「宣誓書」の読み上げや、今後の裁判がどのように進むかの簡単な説明と評議室や法廷の場所の案内をしてもらって解散となりました。
【1日目】
コロナ対策で傍聴席も間をあけて座るよう指示があったため、傍聴人は少なかったのですが、初公判ということもありマスコミ関係者や被害者の家族などもおり、だいぶ物々しい雰囲気だったのを覚えています。
検察側と弁護側の冒頭陳述があり、事件の具体的な概要が説明されました。
この裁判は殺人事件でしたが、被告人が全て罪を認めており証拠も全て揃っていたため、事件自体は重大だったものの裁判の進行はスムーズに行われました。無罪か有罪を決める必要がある時などは、なかなかに大変だそうです。
初日であることもありますが、法廷に入る順番やお辞儀のタイミングなどが決められていたのもあってだいぶ緊張しました……。
【2日目】
さらに具体的な証拠の説明がされました。
事件現場はどこで、どんな言い争いがあったのか、被告人は事件当日どのような行動をしていたのか、監視カメラに映った映像や、事件後に警察が撮影した写真、実際に使用された武器などを用いて丁寧に説明がなされていきました。
凄惨な証拠写真を見て具合が悪くなるパターンもあると聞いていたので少し緊張していましたが、配慮されていたのか今回の証拠としては必要なかったのか、そういったものを目にする機会はありませんでした。
【3日目】
被告人の知人による証人尋問と、被告人に直接話を聞くことができる被告人質問がありました。
証人尋問では今回本人は出席せず、検察側と手紙を通した説明となっていましたが、今まで検察側や弁護側から説明口調で語られていた内容ではなく、事件関係者のより現実感のある証言に正直私は被告人(犯人)側に一瞬同情的な気持ちになりました。
とはいえ殺しはダメだろうという部分は揺らがないのですが、このとき殺された本人は何も言うことができないし聞くことができないという当たり前の事実に、なんとも歯がゆい気持ちにさせられました。
【4日目】
この日は、裁判官と裁判員でどのような判決を下すかの評議を行う日でした。
この評議の内容は守秘義務があるため申し上げられませんが、過去の似た事件を参考にしつつ補充裁判員である私も含めて全員で意見を出し合い、議論が繰り広げられました。
最終的に裁判官と裁判員の多数決で求刑年数が決まることになります。
【最終日】
判決が下されます。
前回の評議で求刑年数は決まりましたが、
裁判員の中には「本当にこれで良いのか考えて夜眠れなかった」という方もいました。
裁判長から懲役年数が言い渡されたとき被告人の表情は読み取れませんでしたが、どうか内容を受け止めて刑期を全うしてほしいと思いました。
殺人事件、懲役年数少なすぎ……?
殺人事件の懲役年数について資料をもらったのですが、
平均すると10年前後が多く、1〜3年ほどで刑期が終わることもあるそうです。
ただ、裁判員制度がはじまってからは徐々に量刑も重くなっているそうです。
裁判官の方は優しい!
裁判の仕事をしてる人はお固い人というイメージがあったのですが、
3人ともとても明るく優しく人当たりの良い人達で、どんな質問も受け止めて答えてくださり、評議の際も意見しやすい環境を整えてくれたため、とても安心して参加することができました。
東京地方裁判所地下1階の本屋さんがすごい
地下にあるコンビニへ昼食を買いに行った際、
小さな本屋さんを発見したのですが、置いてある本のほとんどが法律関係の本!
圧巻でございました…。
弊社ともお付き合いがある学陽書房様の本もたくさん置いてありました!
普段はニュースでしか見ることのなかった犯罪事件に、
まさか裁判という形で参加することになるとは思いもよりませんでした。
犯罪と、それに伴う刑罰についてより詳しく知ることができた事と、
ほかの裁判員の方と意見を交わすことで自分の持つ考え方や倫理観に
とことん向き合った事は、よい経験になったと思います。
裁判員制度について興味が湧いた方は、ぜひ下記のホームページもご覧くださいませ。
裁判員制度HP
https://www.saibanin.courts.go.jp/index.html