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最も大きなお金は500円玉!?

2021年11月5日
編集後記
若狭 和明

ゴミの削減は、心と地球と財布にやさしい

 

人口1,500人ほどの徳島県上勝町が、世界中から注目されている。山の斜面に沿った棚田をはじめ、四季折々の植物による景観が美しい町だが、観光としてではなく、ある取り組みを称賛されているのだ。「ゼロ・ウェスト運動」と呼ばれ、ゴミステーションを町の一箇所のみに設置し、住民はここへゴミを出しにいく取り組みだ。つまりゴミ収集車は存在しない。高齢者が中心の町なので、遠方へのゴミ出しの負担から「実現は難しいのでは?」という声もあったが、心配をよそにすぐに定着し、13品目45分別で、リサイクル率81%を達成。これはゴミ処理に要するコストを大幅に削減しただけでなく、地球環境の保全に大きく貢献している。何より、住民のゴミの分別、またゴミを出さないという意識が芽生え、美しい町になってよりくらしやすくなった。

 

我が家でもこれを少し真似ている。キッチンにしかゴミ箱を置いていないのだ。ゴミが出れば大人も子どももすぐにゴミ箱に捨てにいく。必然的に部屋は広くなり、きれいな状態で過ごせる。ゴミ出しも容易だ。職場でもオフィスの内装をリフォームした際に、各自のデスクにゴミ箱を置くことを廃止し、ゴミ箱を一箇所にした。利便性が悪いという意見もあるが、社内の美化が進み、またデスクから立ち上がるという動作が健康維持にも貢献していると思う。環境回復、掃除、健康回復などにかけるコストが自然に解消され、その分のお金は別で有効に活用できる。

 

お金の本来の価値を知る“人生ルーレット”

 

2020年、小学校で「プログラミング教育」が必修化された。パソコン技術を養うだけが目的ではなく、論理的思考や想像力などを育むことが期待されている。子どもたちがこうした能力を身につけていくことで、将来、より便利な社会を築き上げてくれることだろう。先述のゴミ処理についても解決策が出てくるだろうし、日常生活はどんどん変わっていくはずだ。買い物においてもプログラミングによりキャッシュレスが進んで便利になっているが、そこで見落としたくないのが、お金の価値観である。お金の大切さを知ることは、生きていくうえで、人と関わるうえで必要なことである。そういった思いを込めて制作したのが、金の星社から発売された「大人になってもこまらない! マンガで身につくお金のちしき」である。

2021/9/25「大人になってもこまらない! マンガで身につくお金のちしき」

泉 美智子 監修/大野直人 マンガ・イラスト/金の星社 刊

 

本書は子どもたちに楽しくお金の価値を学んでもらうために、「人生ルーレット」というボードゲームを設定し、マンガと解説で展開している。「宝くじで大金が手に入ったら何に使おうか」というのは誰もが思うことだが、そういった夢見事ではなく、生まれてから大人になるまで家族がどれだけのお金を費やしてくれているか、大人になってからどれだけのお金が必要になるのか、また社会で使われているお金、世界の貧困問題、キャッシュレス化への向き合い方など、さまざまな角度からお金について学べる内容になっている。

ルーレットで物事を決められるのではなく、自身が考えて判断し、行動できるようになることが目的だ。

「人生ルーレット」というゲームをしながら、お金について学んでいく。

ゴミ処理のコストや節約についても解説。

 

お札より硬貨の入った財布のほうがいい!

 

本書ではお小遣いの使い方についても言及しており、お年玉も取り上げている。私の母親は孫にお年玉を2種類渡す。ひとつはお年玉袋に入ったお札。もうひとつは年齢分の100円玉。5歳になったとき500円玉になる。子どもたちはこの500円玉のほうを喜ぶのである。娘も同じだ。おもちゃやお菓子などを自分の財布から支払わせることがあるが、硬貨を使うことを嫌がり、お札を使ってしまうのだ。お釣りがもらえて財布が膨れ上がることが満足みたいで。その気持ちはよくわかる。私も子どものときにそうだったからだ。硬貨の中でも500円玉は大きく、重く、お札よりも存在感がある。

 

その価値観は大人になっても変わることはなく、私は500円玉貯金をずっと続けている。貯まったら10万円。それで家族旅行をする。最初のうちは、500円玉を入れると貯金箱の底に当たって音がする。少し貯まってくるとその音に変化が現れ、貯金箱を手に持って重さを確認するようになる。こうして貯まった10万円は、500円玉200枚分なので、子どもの感覚のままの自分にとっては給料より価値が高い、ような気がしている(大人になって心が濁ってきたので、本当はそう思い込ませている)。

 

人生はお金がすべてではない。しかし、お金の扱いを間違えると人生が狂ってしまうこともある。天からお金が降ってくるわけでもない。とはいって、お金を貯めることが最善ともいい切れない。ただ、ゴミを貯めるくらいなら、捨てるくらいなら、お金を貯めて、無駄遣いをやめよう。「初心に戻る」ではないが、大人にも本書を読んで、お金の価値を再確認していただきたい。

 

若狭 和明
スタジオポルト編集部部長。日本にある価値、を本で表現し発信するのが制作コンセプト。読者の心をくすぐりたい。