ケースを開けると、色とりどり36の色えんぴつがきれいに並んでいる。一種の美術品を見ているようで、使うのがもったいない。最近は100色の色えんぴつも出ており、どれを使おうかと考えるだけで、心が踊る。
子どものころは色えんぴつに限らず、新品の文房具はとても気分をよくさせてくれた。ところが最初はていねいに使っていても、いつしか乱雑な扱いになり、その後、それらがどうなったかを確認すらしなくなる。
知人から子どもに「使いかけだけどいる?」と色えんぴつをいくつかもらった。よって我が子には新品の快感を経験させていない。それでも娘はその中から好きな色をえらんで、絵を描いたり、ぬりえをしたりしている。
どんどん短くなっていく色えんぴつ。どんどん増えていく娘の作品。
子どもが愛用している色えんぴつ、クレヨン、クレパスはすべていただいたもの。
外出用は小さなポーチに入れている。
色えんぴつをはじめ、使いかけの文房具を寄付する取り組みがある。貧困地域にくらす子どもたちは、短くなった色えんぴつで、それぞれの世界をつくりあげていく。新品ではなくても、色えんぴつをにぎったときの心は、きっとときめいている。
みなさんのご家庭に、使っていない色えんぴつはないだろうか?
あるけど、なにに使ったらよいかわからない。
そんな人にブティック社から発行した「カモさんのおしゃれなぬりえ ときめきマルシェ」を紹介したい。
2021/12/21「カモさんのおしゃれなぬりえ ときめきマルシェ」
Illustratorカモ 著/ブティック社
コロナ禍の影響で、お店の休業や短縮営業、イベントの減少などにより、外出の機会が減っている。買い物する喜びはご無沙汰という人も多いだろう。
本書はそんな人に向けて、「ときめきマルシェ」という架空の市場を設定した。
描いたのは、イラストレーターのカモさん。
洋服、雑貨、食べ物、骨董品、花など、カモさんに「こんなお店があったら楽しいな」と思うものを描いてもらい、ひとりの子どもとと1匹の動物キャラクターがめぐっていく、物語仕込みの一冊となっている。
野菜市場のぬりえ
巻頭には、ぬり方の基礎レッスンや、カモさんが着色したサンプルも掲載。これを参考に、みなさんが好きなように色をぬっていってもらいたい。ぬりえを楽しみながら、物語のシナリオを考えるのもおすすめだ。
色えんぴつ以外の画材の特徴も紹介。
カモさんの着色した作品。色えんぴつのチャートも記載。
本書は未完成のまま書店に並んでいる。手にとった人が好き好きに色をぬり、イメージを膨らませながら物語をつくったときに、はじめて完成となる。
つまり、世界に1冊しかない絵本が生まれるのだ。
ぬり終わった際には、色えんぴつを見てもらいたい。ぬる前よりどれくらい短くなっただろうか?
ぬりえに気持ちが宿るように、その色えんぴつにも愛着がわいてきていることだろう。
食品ロスは無駄なく買い物をして、無駄なく料理して、残らないように食べきるもの。とても重要な心がけだけど、どこか善悪にとりつかれた感じもする。
色えんぴつを最後まで使いきる。それは善悪だけでなく、新しい世界をつくり出す、どこか前進的な印象を受ける。
本書の巻末には、数種のポストカードも掲載している。
そのカードに絵をぬり、文章を書いて誰かに送ってみてはいかがだろうか?
ときめく夢色の世界がどんどん拡大していくと思う。
have fun!(楽しんで!)