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色えんぴつにときめいて

2022年1月12日
編集後記
若狭 和明

削ってぬって、削ってぬって広がる世界

 

ケースを開けると、色とりどり36の色えんぴつがきれいに並んでいる。一種の美術品を見ているようで、使うのがもったいない。最近は100色の色えんぴつも出ており、どれを使おうかと考えるだけで、心が踊る。

 

子どものころは色えんぴつに限らず、新品の文房具はとても気分をよくさせてくれた。ところが最初はていねいに使っていても、いつしか乱雑な扱いになり、その後、それらがどうなったかを確認すらしなくなる。

 

知人から子どもに「使いかけだけどいる?」と色えんぴつをいくつかもらった。よって我が子には新品の快感を経験させていない。それでも娘はその中から好きな色をえらんで、絵を描いたり、ぬりえをしたりしている。

どんどん短くなっていく色えんぴつ。どんどん増えていく娘の作品。

子どもが愛用している色えんぴつ、クレヨン、クレパスはすべていただいたもの。

外出用は小さなポーチに入れている。

 

色えんぴつをはじめ、使いかけの文房具を寄付する取り組みがある。貧困地域にくらす子どもたちは、短くなった色えんぴつで、それぞれの世界をつくりあげていく。新品ではなくても、色えんぴつをにぎったときの心は、きっとときめいている。

 

みなさんのご家庭に、使っていない色えんぴつはないだろうか?

あるけど、なにに使ったらよいかわからない。

そんな人にブティック社から発行した「カモさんのおしゃれなぬりえ ときめきマルシェ」を紹介したい。

2021/12/21「カモさんのおしゃれなぬりえ ときめきマルシェ」

Illustratorカモ 著/ブティック社

 

ぬりながら、想像しながらつくりあげる世界

 

コロナ禍の影響で、お店の休業や短縮営業、イベントの減少などにより、外出の機会が減っている。買い物する喜びはご無沙汰という人も多いだろう。

本書はそんな人に向けて、「ときめきマルシェ」という架空の市場を設定した。

描いたのは、イラストレーターのカモさん。

 

洋服、雑貨、食べ物、骨董品、花など、カモさんに「こんなお店があったら楽しいな」と思うものを描いてもらい、ひとりの子どもとと1匹の動物キャラクターがめぐっていく、物語仕込みの一冊となっている。

野菜市場のぬりえ

 

巻頭には、ぬり方の基礎レッスンや、カモさんが着色したサンプルも掲載。これを参考に、みなさんが好きなように色をぬっていってもらいたい。ぬりえを楽しみながら、物語のシナリオを考えるのもおすすめだ。

色えんぴつ以外の画材の特徴も紹介。

 

カモさんの着色した作品。色えんぴつのチャートも記載。

 

本書は未完成のまま書店に並んでいる。手にとった人が好き好きに色をぬり、イメージを膨らませながら物語をつくったときに、はじめて完成となる。

つまり、世界に1冊しかない絵本が生まれるのだ。

 

自分が、誰かがときめく夢色の世界

 

ぬり終わった際には、色えんぴつを見てもらいたい。ぬる前よりどれくらい短くなっただろうか?

ぬりえに気持ちが宿るように、その色えんぴつにも愛着がわいてきていることだろう。

 

食品ロスは無駄なく買い物をして、無駄なく料理して、残らないように食べきるもの。とても重要な心がけだけど、どこか善悪にとりつかれた感じもする。

色えんぴつを最後まで使いきる。それは善悪だけでなく、新しい世界をつくり出す、どこか前進的な印象を受ける。

 

本書の巻末には、数種のポストカードも掲載している。

そのカードに絵をぬり、文章を書いて誰かに送ってみてはいかがだろうか?

 

ときめく夢色の世界がどんどん拡大していくと思う。

have fun!(楽しんで!)

若狭 和明
スタジオポルト編集部部長。日本にある価値、を本で表現し発信するのが制作コンセプト。読者の心をくすぐりたい。